数ある海釣りのジャンルの中でも、その釣法の多さや地域性の豊かさから大変奥深いと言われているチヌ(クロダイ)釣り。
それらの中でも近年になって新たに編み出され、そのスリリングな展開から少しづつ全国各地へと浸透していった釣法にルアーフィッシングが挙げられます。
ルアーフィッシングの具体的な方法でさえも各地によって少しづつ異なり、面白いところなのですが、人によってはそれゆえ取っ付き難く、中々思う様な釣果が上げられないという結果に終わってしまうケースも多いのです。
そこで初心者でも全国各エリアで楽しめ、かつシーズンも長く大物も狙えるラバージグを用いたボトム(底)ズル引きの釣法について解説したいと思います。
狙いは夜間の浅場の汽水エリアやその周辺
様々な特徴を見せる海岸部の中でも、特にチヌが好むのは比較的穏やかな内湾部。
それらの中でもとりわけ大小河川が流れ込む河口エリアやそれに隣接した汽水エリア、そしてその周囲に点在する港湾エリアといった、淡水の良く効いた場所の砂泥底がスイートスポットとなります。
桜が散り初夏に差し掛かって一気に内湾部の水温が上昇してくると、それに乗って数多くのチヌが沖目の深場からそれらのシャローエリア(浅場)に大挙して入ってきます。
5月の連休明け頃からそういったエリアの水底が見ると、肉眼でも大きなチヌが点々と散らばり、主に頭を下に向け盛んに餌を探している姿を確認する事が出来るものです。
ただ昼間のチヌは極めて警戒心が強く、こちらから簡単に見える範囲のシャローエリアでは容易にルアーに反応させる事が出来ません。
昼間にチヌフィッシングが楽しめるのはあくまで自分の気配を完全に消す事の出来るエキスパートだけであり、自分の姿や気配を無神経にチヌの目の前に晒してしまう様な初心者であれば、むしろ昼間はパスし、チヌが警戒心を解く夜間の釣りに集中すべきなのです。
釣り方は投げて底を取って、ズルズルと引いてくるだけ
この様に大変神経質で、いかにも釣り難い印象を与えるチヌなのですが、実は初心者でもいとも簡単に釣り上げる事の出来る方法があります。
それは前述の様にチヌが警戒心を解き餌を貪欲に求める夜間に上記の様なポイントに入り、専門のラバージグを投げてしっかり底まで沈め、その状態でズルズルと引きずってくるというもの。
チヌ専用のラバージグは今やどこの釣具量販店でもルアーショップでもシーズンになれば簡単に手に入れる事が出来、セットも簡単。
しかもルアーフィッシング特有の小手先のテクニックは一切必要とせず、ただひたすらゆっくりと巻いてくるだけというものですから、誰でも簡単に馴染み易く、それでいて高いヒット確率を誇るのです。
タックルは専門のものも確立され幾つもの製品がリリースされていますが、少し柔らか目のバスロッドとPE0.8号が150メートル程度巻ける小型スピニングリールとの組み合わせさえあれば、それでも転用は可能。
ただ初心者にとっては分かり辛く、ロッドに関しては少々値段は高めでもチヌ専用モデルの恩恵に預かった方が良いかも知れません。
しっかり重みを感じるまで焦らず溜めてフッキング
チヌ専用のラバージグを着底させ、そのままズルズル引いてくると、いかにも海底に接触しているというゴツゴツとした連続的な感触が伝わってくるものです。
むしろその程度の起伏や変化があった方が良く、時折ロッドの先をシャくって軽くラバージグを跳ね上げ、その存在をより遠くのチヌにアピールしてあげるのも良いでしょう。
漆黒で格好良い魚体の割にはチヌのアタリは繊細で、引いてくると海底の感触とは違う金属的なガツガツ・カンカンといった前アタリが伝わってくるものです。
何か違う感触と気付きその時点で強く合わせても、チヌの硬い口には中々針がフッキングしないもの。慣れたエキスパートなら鋭く合わせフッキングに持ち込む事も出来るのですが、初心者であればむしろ、その直後の追い食いを待つべきでしょう。
チヌは一旦目を付けた餌は何度もしつこく追い回し捕食する習性を持つ為、一旦アタリが合ってフッキングしなくとも、気にせず巻き続けていれば再び何度もカンカンとアタックしてくる事が多いのです。
その中でぐんとロッドに重みが伝わった瞬間にしっかりとあおってフッキングをすれば完璧。
後は強い引きに決して慌てず、魚の重みをしっかり感じながら慎重にリールを巻き、最後はタモに収めるなり低い場所からズリ上げる等すれば、格好良いチヌを釣り上げる事が出来る筈です。
一般的には潮が上げてくるタイミングが有利に
チヌに限らず、内湾のシャローエリアで活動する多くの種類の魚は、干潮から満潮に向かう上げ潮時、つまり潮位が次第に高くなり活動範囲が拡大に向かう時間帯において最も活発に餌を追うと言われています。
ですから、夕方から夜間にかけて潮位が次第に上がってゆく時間帯は大きなチャンス。釣具店やインターネットの潮汐表をしっかりチェックし、該当する日時には必ずポイントに身を置く様心掛けるのが、大物チヌに少しでも近付くコツとなるのです。