50代~60代のおじさんに読んでもらいたい漫画5選

日本の漫画やアニメーションは、今では世界で高く評価される、大きな日本文化のひとつに成長しました。

2009年の統計によると、外国人の日本語学習の目的は、アニメや漫画に関する知識とと答える人の数が50.6パーセントという高い数字であったそうです。

しかし、50代や60代の方にとっては、漫画は子供の文化であるといった観念を持っている人が、まだまだ多いのではないでしょうか。たしかにかつての漫画は、少年漫画雑誌に連載された少年・少女向けのものがほとんどでした。劇画と呼ばれる作品が出始めた時ですら、その対象年齢はせいぜい大学生どまりでした。

しかし、青年漫画週刊誌が数多く刊行されるようになった1970年代から、大人の鑑賞に堪える漫画が数多く登場しました。総理大臣を務めた麻生太郎が、漫画「ゴルゴ13」を愛読している事は有名です。

また、その作者さいとう・たかをは、かつて「漫画はいずれ大人が読むもにになる」と言っていましたが、まさに今、漫画の中には大人の鑑賞に堪える成熟した作品が数多くそろう時代になりました。

今回は、50代~60代の男性におすすめの漫画5選を紹介させていただこうと思います。

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50代~60代の男性におすすめの漫画5選

おじさんにお勧め漫画1:迷走王ボーダー

現在50~60代である方は戦後生まれの、幼少期に高度経済成長期を経験している世代に当たります。

この世代の文化的な特徴のひとつは、自分に文化を教えてくれるはずの大人の世代の多くが、戦争で命を落とし、失われてしまった事です。

自分に色々な事を教えてくれるはずの文化的な教師が少なくなってしまった事が、この世代に独創性を与えたという世代論を語る学者もいます。文化を引き継ぐのではなく自分で作り、人から価値観を教えられるのではなく自分で考えて正義を確立していった、というわけです。

こうした戦後生まれの先鞭を切ったのが団塊の世代であり、この漫画の作者である狩撫麻礼もこの時代に生まれています。

「迷走王ボーダー」は、価値観が破壊されて自分ですべての善悪を判断することになった世代の主人公が、次第に経済最優先で意味は内容は問わないといった世界へと変わっていく日本の中で、葛藤しながら生き方をさがし続けるありさまが描かれています。笑いがあり怒りがありという様々な物語が展開しますが、同世代の方であれば、これらの寓話じみた物語の裏に隠された世代特有の葛藤やメッセージに、懐かしさと強い共感を覚える方も多いのではないでしょうか。

おじさんにお勧め漫画2:じゃりン子チエ

かつて大ヒットし、アニメ化や映画化もされた作品なので、知っている方も多いでしょう。大阪を舞台にした喜劇・人情劇で、時代設定が現在60代の方の幼少時と同じぐらいです。

ばくち狂いの父と、その父に愛想をつかして家を出て行った母の間に生まれ、小学生にして学校から帰ってくるとホルモン焼き屋を営んでいる少女チエちゃんが主人公です。

彼女の周りで生きている人々の考え方や風情が、今は失われつつある日本文化を実によく表現しており、読んでいて微笑ましくなってしまいます。この漫画は、基本的に喜劇です。

漫才でもなんでも、大人向けの笑いというものが年々減少していく中、この漫画と「釣りバカ日誌」のふたつは、漫画の中では50代以上の大人の鑑賞に堪えるお笑い漫画といえるでしょう。

67巻で完結していますので、かつて楽しんでいた方も、あらためて読んでみてはいかがでしょうか。

おじさんにお勧め漫画3:バガボンド

漫画というものは、小説と絵を組み合わせた表現媒体です。そしてその絵画部分は、「劇画」と呼ばれる漫画のジャンル登場以降、飛躍的に進歩してきました。

長い日本の漫画文化の中で、画力の最も高いであろう作品が「バガボンド」です。作者である井上雄彦は、この作品執筆の最中に、絵を毛筆で描くようになりました。

これによって絵における表現力が格段に高くなり、漫画本のどのページをめくっても立派な水墨画であるかのようなクオリティの作品になりました。

また、物語は剣豪・宮本武蔵を主人公としたものですが、その中で描かれるテーマが哲学的です。我とは何かという問答を、仏教思想を軸に組み立てるなど、吉川英治の原作「宮本武蔵」をはるかにしのぐ深遠な内容となっています。

おじさんにお勧め漫画4:MASTERキートン

漫画に限らず、物語というものは、物語の中で世界が閉じられているか、あるいはその物語が他のどこかと繋げられているかで、価値が大きく変わってくるものです。

「MASTERキートン」で描かれた世界は、主に現代の世界政治、そして古代からの人類の文明、こういった所に物語が直接つながっています。

主人公は海外の保険会社の調査員であり、また考古学を志す学者でもあります。物語は数話でひとつの話というユニット形式を取りながら、様々な人類の問題やロマンにアクセスしていきます。

18巻で完結しましたが、現在は後日談を扱った単行本も発行されています。

おじさんにお勧め漫画5:人間交差点

「課長島耕作」を大ヒットさせた弘兼憲史が書いた、ヒューマンドラマです。漫画全体を通して登場する主人公は存在せず、1話完結のショートストーリーになっています。

物語は、人間個人の人生に関する重厚なものが多いです。妻に先立たれ、死ぬ気で妻と自分の墓を掘り進める男の話。幼いころに自分を一生懸命育ててくれた父の死の間際に、自分がやくざになってしまった事を悔いながら殺される男の話。

子どもたちをたくさん育てながら、成長した娘息子たちがつらい目にあうたびに、自分の財産を切り崩して子供を助けてきた母親が、臨終の際に自分の人生を思い返す話。

さまざまな人間ドラマを通じて、日常を生きる事だけに流されてしまいがちな私たちに、人間としてどう生きるかを考えさせてくれる物語の数々です。

まとめ

音楽の中には歌謡曲ではない芸術音楽があるように、あるいは映画の中にもエンターテインメントではない文芸作やアートフィルムがあるように、漫画にも大人の鑑賞に堪える成熟した作品が数多く生まれています。

ここでご紹介した漫画は、さまざまな人生経験を積み、さまざまなものを観て体験してきた50代60代の方の鑑賞にも耐えるクオリティと内容を持った作品です。世界に誇る日本の文化のひとつとなった「MANGA」の世界を、どうぞ楽しんでみてください。

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