戦国時代は日本の歴史上、最も多くの個性豊かな猛将・知将が登場した時代だと言えます。
そんな猛者たちが群雄割拠したドラマチックな時代を学ぶのに、文字ばかりが並んだ歴史の教科書ではもったいないと思いませんか?
今や日本のお家芸とも言える漫画なら、その時々の登場人物の心情が手に取るようにわかるので、より感情移入もしやすいでしょうし、当時の人がどんな風に考え、どんな風に生活していたのかをイメージすることも簡単です。
今回は特に歴史を学ぶという観点から、史実に忠実で、しかも面白くてやめられない戦国時代をテーマにした漫画のうち、選りすぐりの5作品をご紹介しましょう。
戦国時代を手軽に学べるお勧め漫画5選
お勧め漫画1「センゴク」
「センゴク」は現在、ヤングマガジンに連載中の漫画です。
この漫画のポイントは、戦国時代の主役とも言える織田信長や豊臣秀吉、徳川家康を主人公とするのではなく、彼ら3人の英雄に仕えた仙石権兵衛秀久という名も無き武将を主人公としている点です。
つまり、歴史上に名を残した人物の単なる伝記漫画やサクセスストーリー的な漫画ならよくありますが、その家臣の目を通して描いた物語というのは、これまではあまり見かけなかったのではないでしょうか。
戦国時代に行われた様々な合戦についても、作者である宮下英樹先生は実際の歴史資料を元に、しっかりと時代考証を重ねられており、よく映画やドラマにあるような、馬上で長い槍をブンブンと回しながら華麗に登場し、雑魚どもを一掃する…などという荒唐無稽なシーンなどありません。
「センゴク」で描かれている合戦は、もっともっとリアルです。下っ端の武士達がまさに戦場を這いずり回って血みどろの戦いを見せてくれます。それだからこそ迫力があり、どんどん感情移入せずにはいられないのです。
以上、「センゴク」は、歴史をこれまでとは違った角度から、しかも迫力一杯で眺めることができるという点が、何よりのお勧めポイントです。
お勧め漫画2「へうげもの」
戦国時代は織田信長や豊臣秀吉など、一部の有力戦国武将たちだけによって牛耳られていた時代ではありません。戦国武将たちが各地で血なまぐさい戦を続けていた一方で、かの千利休は堺の豪商たちの後ろだてを受けて、茶の湯文化を確立させた時代でもあるのです。
そして戦国武将の寵愛を受けた茶人たちは、一見政治の世界とはかけ離れた存在ですが、徐々に政治にも影響を与えるようになり、やがて一定の力を得るようになりました。
本能寺の変を実際に起こしたのは明智光秀ですが、その裏で光秀の謀反を促した黒幕が存在し、それが豊臣秀吉だとする説が根強くあります。しかし、さらにその裏には茶人である千利休の存在があった…そんな新しい解釈の下で展開する物語が、この「へうげもの」です。
「へうげもの」の主人公は、千利休の死後に茶の湯の世界で力を得ることになる古田織部という茶人です。
織部の目を通して、これまで聖人視されてきた千利休が、とてつもない欲望と才能を有する化け物として描かれている点も見所ですが、織部自身の中に見られる、茶人としての信念と秘められた野心との葛藤も見逃せません。
お勧め漫画3「花の慶次」
「花の慶次」は戦国時代一の“かぶきもの”と呼ばれた前田慶次が主人公の漫画です。
今やパチンコやゲームなどのCMでもお馴染みのタイトルですが、隆慶一郎先生の時代小説「一夢庵風流記」を元に、「北斗の拳」でお馴染みの原哲夫先生により漫画化された作品だと説明すれば、そのスゴさがわかるのではないでしょうか。
主人公の前田慶次は、とにかく豪快ですが情に厚く、関わる人すべてを惹き付ける、まさに「男がホレる男」の代表のような存在です。
弱きを助けて、強きをくじく勧善懲悪のストーリーで、己の信念のまま、危険をもかえりみず大切な人を守るヒーローものですが、原哲夫先生の手による漫画だけあって、アクション要素も満載で、気軽に楽しめる作品です。
もちろんストーリー展開は史実に基づいており、伊達政宗や直江兼続、真田信繁(のちの幸村)など、実在した様々な猛将・知将も次々と登場するので、楽しく歴史を勉強することができます。
また、同じ原哲夫先生の作品に、前田慶次との結びつきも深い直江兼続を主人公とした「義風堂々」という漫画があります。「花の慶次」の外伝といった作品ですので、あわせて読まれるとより楽しめるでしょう。
お勧め漫画4「NHKその時歴史が動いた コミック版 修羅の戦国編」
言わずと知れたNHKの人気番組のコミック版です。
上杉謙信や村上水軍の首領、天才軍師とも謳われた黒田官兵衛、なよなよとした公家のイメージが強い今川義元など、歴史的には脇役な人達にスポットを当てた貴重な漫画だと言えます。
歴史の教科書にはないような話が多いですし、史実に忠実という点から見ても、特に小中学生が歴史を学ぶ教材としては最適な漫画だと言えます。
また、本書と同じシリーズに「戦国編」というのもあります。
こちらは前述の「修羅の戦国編」とは異なり、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、真田幸村など、歴史の表舞台に立つメジャーな偉人達をとりあげたものです。
しかし、「天下統一」に加えて、「女たちの関ヶ原」というサブタイトルも付いていることからもわかる通り、前田利家の妻であるまつや、明智光秀の娘であり、細川忠興の妻であるガラシャなど、「内助の功」をテーマにしたものも含まれています。
いずれも歴史に詳しい人から見れば有名なエピソードばかりですが、歴史をこれから学ぶ人達にとっては、歴史に興味を抱く良い入り口となる漫画になるでしょう。
お勧め漫画5「雪花の虎」
「上杉謙信は女だった」…一見突飛な説ではありますが、現在でもまことしやかに囁かれている謙信女性説に基づいて描かれた、東村アキコ先生による漫画です。
もちろん、この設定以外については、史実に忠実に描かれており、また、歴史が苦手な人にも分かりやすいように、随所に解説漫画が挿入されているという点でも、より楽しく歴史を勉強できる一冊として取り上げることにしました。
この漫画のみどころは、何より血なまぐさい戦国の世を、東村アキコ先生独自の女性目線でポップに描かれている点です。前述の解説漫画もその一つですが、この作品には、歴史が苦手な人も、また、女性でも、楽しく歴史に触れてもらおうとういう作者の工夫が、随所に見られる読者に優しい作品だと言えます。